Q&A

大規模修繕工事に関わる主なQ&A

1.大規模修繕工事の準備段階について

  • Q1-1:大規模修繕工事を実施する方式には、2つの方式があると聞きました。どんな方式ですか?

    • A1-1.

       その一つは、「責任施工方式」というものです。この方式は、大規模修繕工事を実施する際に、発注者となる管理組合が、工事を実施する会社(=施工会社)を募集し、複数社に見積を依頼した上で、金額が安いとか、さまざまな条件を勘案し、適切だと判断した1社にお願いするという方式で、ごくシンプルな採用方法です。今から20年程前には大半、この方式で、マンション大規模修繕工事を実施していました。
       もう一つの方式は、「設計監理方式」というものです。この方式は、管理組合と施工会社の間に1クッション「設計監理者(大規模修繕工事コンサルタント)」という第三者を入れて実施するというやり方です。前述の「責任施工方式」という主流方式の欠点を補うという意味も兼ねています。
       責任施工方式の問題点とは、見積施工会社ごとに ①実施する際の材料・工法に違いがあること②数量がそれぞれに異なること ③工事の範囲がそれぞれに見方が異なるなど、見積内容に相違が発生することから、受領見積の比較検討が非常に難しく、施工会社選定が困難となります。そこで、設計監理者に修繕工事の範囲・数量・仕様の策定を委託し(これを『設計業務』という。)、管理組合で承認したものを見積会社に提示し同じ条件の下、複数社に見積を依頼し施工会社を選定するというものです。この方式だと、同一条件での見積が受領できるため、見積金額での比較が可能となり、スムーズに業者を選定できます。また、実際の工事に関して、第三者が施工会社の工事を監視する(これを『監理』という。)ので、仕上がり品質の確保ができるというメリットがあります。ただし、工事費用の他に設計監理料が別途必要になるというデメリットがあります。
       近年では、大規模修繕工事が、建物の資産価値の維持向上に非常に重要なものであるという認識から、建物の劣化診断から、設計・監理、工事後アフターまでの一連を第三者に委託する『設計監理方式』を採用する管理組合が多くなりつつあります。

  • Q1-2:大規模修繕工事の大まかな流れはどのようなものですか?

    • A1-2.

       まず、大規模修繕工事をやりましょうという発案段階から始めます。これが居住者の方からの指摘によるのか、管理会社からの指導によるのかは別にして、そろそろ準備に入る必要があるという理事会の判断から始まります。一般的には、長期修繕計画書によって、何年に実施するという計画の1〜2年前には準備を始めます。専門委員会の立ち上げが第一段階に入ります。
       次に設計監理方式で実施する場合は、パートナーであるコンサルタントの選定が必要になります。ここまでは、準備態勢固めの段階です。
       次からは具体的な作業段階に入ります。まず、建物の現状を把握するために建物診断を行います。もちろん、設計コンサルの業務です。この段階では、居住者の方からのアンケートを取ることなども必要になります。次に建物診断の結果に基づき、設計段階に入ります。工事の範囲、工事の仕様・工法の選定、数量の算出、概算予算の算出などを行います。これらを元に工事に関する全体予算を決定します。(専門委員会で審議、理事会で方針決定、総会で承認という一連の流れがあります)
       次に、施工会社の選定に入ります。決定後、総会承認を経て、工事に関する住民説明会を実施します。
       いよいよ工事に入り、コンサルによる工事監理が行われ、検査等を経て完了します。その後、定期的なアフターが行われるという流れになります。
       要約すると、建物診断⇒設計⇒施工会社選定⇒工事⇒アフターという5つの大きな流れになります。

  • Q1-3:大規模修繕工事は10〜12年のサイクルで実施ということのようですが、初めての工事と2回目・3回目とでは何が違うのでしょうか?

    • A1-3.

       ご指摘のように10年〜12年のサイクルで実施というのが一般的です。その本来の趣旨は、コンクリート建物の劣化を修復するには10〜12年が適切であるということにあります。ですから、劣化箇所を修復するという点では、1回目も2回目も同じことになります。しかし、建物の劣化箇所や程度は経過年によって異なります。従って、全く同じであるということはないと思います。
       また、劣化と言っても物理的劣化だけでなく、社会的劣化という問題も長い年月のうちには出てまいります。居住者の方々の使い勝手の問題などに対応するということもあります。大規模修繕工事のポイントには、足場を掛けるということにありますので、この時期に実施するという工事もあると思います。

  • Q1-4:大規模修繕工事の実施時期は、どのように決めたらよいのですか?

    • A1-4.

       マンションの大規模修繕工事は、居住者の方が生活している状態で工事を実施するという特殊性があります。特に大規模修繕工事は、建物ほぼ全周に作業用の足場を掛け、網戸の使用や窓の開閉、バルコニー使用の制限などが発生しますので、そのような事情を考慮しますと、一般的に、春工事・秋工事と呼ばれる時期に実施することが多いようです。
       つまり、2月or3月から着工してゴールデンウィーク前または梅雨前に終わらせる春工事と9月or10月から着工してお正月前に終わらせる秋工事ということになります。この期間の気候は、作業環境的にも非常に適しておりますし、真夏の室内クーラーを使う時期は避けたい、新年はきれいになった建物で迎えたいという居住者の要望も加味しての工事実施に適した期間であります。

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2.建物の調査診断について

  • Q2-1:建物診断をやって、何を決めるのですか?また、簡易診断という方法で、建物の現況が分かるのですか?

    • A2-1.

       建物の傷み具合を調べて、その原因を見極め、補修・修繕する方法を選定していくというのが、通常の建物診断の目的です。簡易診断とは、目で見て、叩いて、さらに触れて、建物の劣化を識別して行く方法です。かなりの経験を重ねた者でないと判断は難しいと思います。場所によって起きる傷みであるという判断はできますが、破壊検査・非破壊検査を実施しないと判断できない場合もあります。特に建物を支えるコンクリート部分(躯体といいます)の劣化の補修(下地補修といいます)が、大規模修繕工事のポイントです。

  • Q2-2:建物診断の結果、大規模修繕工事はもっと先に延ばしてもよいという結果が出ることはあるのですか?

    • A2-2.

       当然、そのようなケースはあります。建物の簡易診断を実施して、そろそろ大規模修繕工事を実施すべきだということになったとしても、設計コンサルが実際の調査をして見たところ、実施はまだ先でもよいという結論が出ることはあります。
       大規模修繕工事というのは、仮設足場を掛けて総合的に劣化箇所を大掛かりに補修しようという工事です。建物診断の結果、足場を掛けなければ補修できないという箇所がないということになれば、当然ながら仮設足場なしに部分的に補修すれば足りるという理屈が成り立ちます。
       逆に足場を掛けて工事をしなければならない個所があるならば、まだ先でもよいと判断される劣化箇所もこの際実施しておこうということになります。次に足場を掛けるまで放置しておくことはできないから、実施しようという箇所も含むことがあるということです。

  • Q2-3:建物の劣化調査診断の方法について教えてください。

    • A2-3.

       建物の劣化診断には、通常3つの段階があると言われています。
       まず一次調査では、できるだけ広い範囲を対象に目視調査・打診調査などの簡易調査を行い、設計図書との照合や管理者からの情報などにより劣化状況の概要を把握し、修繕工事の要否を判断する資料を作成します。
       次は、二次調査という段階です。一次調査により修繕工事の要否が判断できない場合に、比較的簡易な器具を用いて、劣化状況を把握するものです。
       そして三次調査段階では、二次調査ででも判別がつかない場合に、より高度な機器を用いて、劣化状況の把握を行うものです。

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3.大規模修繕工事の設計について

  • Q3-1:大規模修繕の設計って、どんなことをするのですか?

    • A3-1.

       大きく分けて、4つの作業を実施します。
       ①建物調査に基づいて、工事の範囲を設定します。劣化が顕著だから全面的にというものはもちろん仮設足場がないとできない箇所で、そんなに劣化は進んでいないけれど、次に足場を掛ける大規模修繕工事まで放置はできないという範囲も当然含みます。
       ②建物診断で確認された劣化数から全体の数量を予測した劣化箇所の数量を算出します。また全面的に塗り替えたり、張り替えたり、打ち替えたりする箇所の全体数量を積算します。
       ③それぞれ補修したり、塗り替えたりする材料・工法を選定します。この際、そのグレードを把握し、保証年数などを設定します。当然ながら、材料の単価を設定し、工事予算に反映させることになります。
       ④大規模修繕工事の概算予算を算出します。一体いくらぐらい費用がかかるものなのかを算出します。
       ここまでを基本設計と言います。
       その後、管理組合の予算に合わせて、グレードの見直し、範囲の見直しなどの作業を行う実施設計を経て、設計予算を組み替えていきます。

  • Q3-2:大規模修繕工事の金額というのは、どのようにして決まるものなのですか?

    • A3-2.

       概要を申し上げますと、該当項目について、設計段階でそれぞれの項目の仕様・工法を決め、その数量を表示した見積書を作成します。それに単価を入れて、項目ごとの金額が算出された合計金額を集計したものが設計予算金額になりますが、一つだけ抜けている項目があります。それは、工事を実施する会社がその工事に必要とする人件費とか、保険に掛けている費用などで、通常「諸経費」と言われている項目があります。つまり工事費合計金額+諸経費が全体の工事金額になります。
       設計予算書の単価・金額を抜いた見積書「金抜き見積書」を施工見積を依頼した各社に渡して、単価を入れて各社の見積を作成してもらうというのが主な流れです。高い・安いの金額比較をするためには、同一条件での見積書が必要になります。そのため、①見積各社が一堂に会して見積内容についての説明を受けます。これを「現説」といいます。②見積要領書に基づいた説明を受けた後、立ち入リ可能な範囲を一緒に見て回ります。この段階では、通常は質疑を行いません。③各社改めて、現地を確認する日時を設定し、各社担当者が現場確認を行います。④先ほどの「現説」質疑は、質問内容を聞いていた・聞いていなかったということが生じますので、各社現地を確認したのち、書面で質問をします。⑤質問内容については、各社の質問をまとめて、書面で回答を行います。⑥こうした経過を経て、見積を提出してもらいます。
       提出してもらった見積書を開封して、比較一覧表を作成し、比較検討して決めていきます。施工会社を決定するには、さらに数社との面談を行い、金額のネゴシエーションを行って内定し、総会承認を受けるという手続きを取るのが一般的な方法です。

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4.大規模修繕工事の工事監理について

  • Q4-1:大規模修繕工事の監理って、何をするのですか?

    • A4-1.

       簡単に言いますと、工事監理とは、工事が法律や設計図書などと照合して適切に行われているかどうかを見極めることを言います。言い換えれば、発注者である管理組合の側に立って、工事が適法に行われているかを監視することです。
       工事の契約時には契約条件についての助言や契約書類のチェック等を行い、契約調印に立ち会います。工事着手時には、近隣挨拶や諸官庁への届けの確認、仮設施設のチェック、施工管理体制の承認などを行います。また、工事が実際に始まったときには、進行状況の確認、安全性の確認、施工要領書の確認、実数精算項目の確認、工事広報の指示、出来高査定などを行います。工事竣工時には、足場解体前の検査、解体後の検査、工事引渡図書類のチェック、工事完了報告書のチェックなどを行います。

  • Q4-2:工事の検査は、どのように実施するのですか?その頻度は?

    • A4-2.

       まず、マンション大規模修繕工事の場合の検査は、①仮設足場が掛かった際に行います。②次に実数精算項目について、実際にその数量の確認検査があります。③下地補修工事(=劣化箇所を補修する工事)後に設計通りに実施されているかどうかを検査します。④足場を解体する前に各種工事が設計通り行われているかどうかを検査します。⑤足場が解体された後に竣工検査を行います。
       概略の検査を説明しましたが、それぞれの検査に当たっては、施工会社内部の社内検査、監理者検査、組合検査を実施します。当然ながら、検査でNOと出た場合にはダメ直しを行い、再検査を実施するというのが、通常の方法です。

  • Q4-3:工事が終わった後の手続きについて教えてください。

    • A4-3.

       各種検査を実施して工事が完了しますと、工事施工会社から竣工図書が提出されます。その中には、竣工届、引渡書、品質保証書、工事写真、材料一覧表、会議議事録、検査報告書、材料カタログ類、出荷証明書など20項目以上にわたる書類が添付されています。
       それらについて、工事監理者が目を通し、承認されたものが提出されるということになります。その他に工事監理者の監理報告書も提出されます。
       こうした手続きを踏んで工事が完了ということになるわけです。

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5.工事後アフターについて

  • Q5-1:工事後のアフター点検は、何年ごとにやるのですか?

    • A5-1.

       通常、工事の部位ごとの保証期間というのがあります。ほぼそれに合わせるようにして、アフター点検を行います。

  • Q5-2:工事が終わると修繕委員会は解散しますが、アフターには立ち会うのですか?

    • A5-2.

       通常は、工事が終わりますと、修繕委員会も解散されるということになります。名称を変えて存続するということもありますが、その場合は、存続した専門委員会でアフター点検には立ち会います。解散した場合は、その時点での理事会の方々が立ち会うというケースが多いようです。

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6.長期修繕計画について

  • Q6-1:大規模修繕工事は終わりました。次には何をすればよいのかを考える必要があると思います。それは長期修繕計画の見直しだと思います。その対策を教えてください。

    • A6-1.

       今までの長期修繕計画は、あくまでも予想の費用を算出して計画を立てていたわけですが、全体的に大きなウェイトを占めている大規模修繕工事の金額がほぼ確定的な金額が出ましたので、精度の高い計画書への移行するために、次の修繕に向けて計画を見直すことをお勧めします。
       劣化の数量は別にして、建物そのものの数量は大きく変化をすることはありませんので、見直しは工事項目の増減程度で済むと思われます。前述しましたように、もう一つの大きな工事として「設備」関係の工事を想定した見直しをきちんとしておくことが必要になります。

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